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ワイヤーロープの概要 1

1 特徴

 ワイヤーロープ(以下、ロープと呼称)は素線を数多く組み合わせた複雑な構造を有しており、その選択や使用に当っては、ロープの特徴を知ることが大切です。
 ロープの特徴としては、一般の鉄鋼二次製品に比べて、
 @引張強度が高い。
 A耐衝撃性に優れている。
 B長尺物が得られる(運搬、輸送が容易)。
 C柔軟性に富む(取扱が容易)。
などが挙げられます。
 一方、用途によっては、@弾性係数が低い(伸びが大きい)、A自転性があるなどが欠点になる場合もありますが、@に対してはプレテンション加工、Aに対しては非自転性ロープを採用するなどの対応策がとられます。

2 構成

 ロープの構成は、ストランドの数と形、ストランド中の素線の数と配置、繊維心入りか、ロープ心入りかなどによって変化しますが、ここでは一般的なロープの構成について説明します。
 ロープは写真@〜Bに示すように数本〜数10本の素線を単層又は多層により合わせたストランドを、通常は6本を心鋼の周りに所定のピッチでより合わせて作られています。

 写真2のように、国産ワイヤーロープの繊維心の中にはメーカー名が記載されたテープが入っており、どのメーカーの商品なのかが分かります。海外メーカーの場合は入っていない場合もあります。

3 ストランドの数

 ロープは通常3〜9本のストランドがより合わされていますが、特別の場合のほかは構造的にバランスのとれた6ストランドがほとんどです。ただし、エレベータ用のように、特に柔軟性を要求される場合には8ストランド、また非自転性を要求される場合には、ストランドを2層以上とすることもあります。
 同一径のロープでは、一般的にストランド数が増加するほどストランド径は細くなり、ロープは柔軟性を増しますが、逆に強度は低くなり、耐摩耗性や耐形くずれ性などが劣ってきます。

4 ストランドのより方(素線の数と配置)

 ストランドは、通常同一径又は異なる直径の7〜数10本の素線が単層又は多層により合わされています。
 素線を2層以上重ねて配置する方法には、各層の素線を同じより角でよる交差よりと、各層の素線が同一ピッチになるように1工程でよる平行よりとがあります。
 同一径のストランドでは、素線数が増加するほど素線径は細くなり、ストランドは柔軟性を増しますが、逆に耐磨耗性や耐形くずれ性などが劣ってきます。

 @ 交差より

 交差よりは、Cross Lay又は各素線の接触状態から点接触より(Point Contact Lay)とも呼ばれ、ほぼ同径の素線を各層別により角がほぼ等しくなるようにより合わせたもので、各層により込まれる素線の長さが等しくなり、各層間の素線は点接触状態となります。
 したがって、素線に作用する引張応力は均等になりますが、点接触による曲げ応力などが付加されて、耐疲労性はあまり期待できません。
 なお、このより方には、6×76×196×24などが属しています。
 素線の配置には、1本の心線の周りに素線を6本、12本、18本、24本と等差級数的に6本ずつ各層ごとに増加する方法と、素線3本をより合わせたものを心にして、その周りに9本、15本と6本ずつ各層ごとに増加する方法とがあります。通常は前者の配置が圧倒的に多く、後者は中心の3本よりを繊維心(小心と呼称)に替えた6×24ストランド(a+9+15)に、その片鱗がうかがわれるに過ぎません。

 A 平行より

 平行よりは、Parallel Lay又は、Equal Layとも呼ばれ、またストランディングの工程数からOne Operation Lay、さらに各素線の接触状態から線接触より(Linear Contact Lay)とも呼ばれています。
 平行よりは、ストランドの下層素線の谷間に上層素線が正しく重なるよう、各層素線をすき間無く配置させるために、それぞれ異なる径の素線を同時によったもので、各層素線は同一ピッチになって、線接触状態を呈します。
 したがって、交差よりロープと異なり、各層素線のより角及び素線の長さは等しくありませんが、線接触となっているために耐疲労性が優れています。
 なお、このより方には、6×Fi(25)、6×WS(36)、8×S(19)などが属しています。

 (a)基本形
 平行よりの代表的なものとしては、次の4種類があります。

 T シール形(Seale)
 各層の素線数は1+n+nのように表され、内外層の素線数が同数で、内層素線の凹みに外層素線が完全に収まっています。このシール形ロープは、他の平行よりと比べて外層素線が太いので、特に耐摩耗性に優れており、主としてエレベータ用として使用されています。

 U ウォーリントン形(Warrington)
 各層の素線数は1+n+(n+n)のように表され、外層素線には大小2種類あり、外層素線数は内層素線数の2倍で、内外層の組合せによってすき間を少なくしてあります。
 このウォーリントン形ロープは、最近ではあまり使用されておりません。

 V フィラー形(Filler)
 各層の素線数は1+n+(n)+2nのように表され、外層素線数を内層素線数の2倍とし、内外層のすき間に内層素線と同数の細いフィラー線が充填されています。
 このフィラー形ロープは、柔軟性、耐疲労性、耐摩耗性のバランスが良く、平行よりロープのうちで最も広範囲に使用されています。

 W ウォーリントンシール形(Warrington Seale)
 ウォーリントン形とシール形とを組み合わせたもので、耐疲労性が非常に優れ、また柔軟性に富み更に耐摩耗性にも優れているため、用途は広範囲にわたっています。        

 B フラット形

 ロープの外周がフラットになるように、ストランドを組み立てたもので、このロープは表面が平滑なため、ドラムやシーブの溝との接触による面圧が一般のロープよりも小さく、耐摩耗性に優れています。一般的には三角ストランドと蛤形ストランドとが最も多く、平ストランドも一部使用されています。

 (a)三角ストランド形
 従来は三角線の周りに外層素線をより合せていましたが、最近は丸線をより合わせて三角形にした心の周りに素線を1層又は2層より合わせた丸線三角ストランドが一般的になっています。

 (b)蛤形ストランド形
 断面が蛤形をしたもので、このロープは、一般に3又は4ストランドとなっています。また、耐疲労性の他に非自転性も兼ね備えております。

 (c)平ストランド形(オーバルストランド形)
 素線をだ円形により合わせたストランドを繊維心の周りに2層より合わせたもの(シンキングロープ)や、素線を多層により合わせたものを心にして、その周りに6〜10本のストランドをより合わせたもの(コンセントリックロープ)などがあります。

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